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第42回 平成24年1月12日 有川浩『阪急電車』

阪急・今津線を舞台とした16編の短編の連作で、各編、それぞれ視点は違うが、登場人物に因果関係を持たせ、それがロンド(輪舞曲)形式で一つの物語を構成する。
寝取られた男の結婚式に、純白のドレスで着飾って「討ち入り」を果たす翔子。
憤怒の形相の新婦。女同士の怨念の凄さを、ブラックユーモアで見せつける。 
カツヤの暴力に耐えながらも、何とか彼の心をつなぎ止めようと苦悶するミサ。
「くだらない男ね。やめておけば? 苦労するわよ」・・・仁川駅で同じ電車に乗り合わせた老婦人・時江の、このひと言で目が覚める。
「もうこりごりです。さようなら」とメールを打った途端、カツヤが本性を現す。
 小林駅のツバメの巣。『今年もやって参りました。お騒がせしますが、巣立ちまで温かく見守ってください』という張り紙。白いビニール傘の取っ手を引っかけて、糞受けにしているのは、駅の警備員のアイデアである。
「ああ、ねえ、これ。ツバメの巣、取っちゃうわけにはいかないでしょ。はるばる渡ってきたんだし、縁起のいい鳥だしね。でもここに巣、作られると困っちゃうんだなあ。ほら、お客さんにちょうど糞がかかるとこでしょ。そんで皆で考えてねえ」・・・ 微笑んでしまう。
 新しい恋が芽吹き、古い恋が破綻を迎えて再生が始まる。「阪急電車」の文体は、平易な話し言葉で書かれている。軽い乗りでさっと読み流してしまうが、実は、鍛え抜いた手練れの文章だと思う。ペーソスも笑いも、ブラックユーモアもこの短編に凝縮されている。初め、作者は男だと思っていた。女と分かり、男にはこれほどの細やかさはないだろうと、納得した。(O)

8駅、片道15分の構成がいい。長くても短くても、こうはまとまらなかった。阪神電車でも、近鉄でも、はては、京浜電車池上線でもいいんじゃないかという意見もあったが、やはり、阪急電車今津線でなければ、物語は動かなかったのではないか。乗ったことのある人でないと雰囲気は分からないが、近郊の路線と違う感じがある。
「恋の始まり」、「別れの兆し」、そして「途中下車」、帯に掲げたこのコピーが表しているように、人それぞれの、そのときの人生がある。作者は巧みな手法で、6つの物語を折り返しの路線の中で、完成させていく。その構成には、うなずけるものがある。
物語のつなぎは、電車の中で、目撃した出来事。なんの関わりのない他人に行為に自身を振り返り、決意したり、行動したり。そこから終わり、また始まっていく。実際、電車の中では、こんなに他人に干渉を持たないが、作者はこのつなぎを巧みに組み合わせ、それぞれの物語をハッピーに結んでいく。
どこかの感想で「ファーストフードみたいな小説だ」とあった。言いえて妙だ。だれでも皆に好まれる出来栄えだってこと。それを可能にしているのは、作者の力量によるところが多いのかも。女性に受けるわな、と思っていたら、作者は女性でした。(S)

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