You are not Logged in! Log in to check your messages.

Check todays hot topics

Search for Services:

Please Log in

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第75回読書会 平成29年7月13日(木)浅田次郎『ハッピー・リタイアメント』幻冬舎文庫

全体的に不評、賛同者は二人だけだった。
(好評)
■痛快娯楽作として読んだ。特にマッカーサー元帥の功績については、いろいろと教えられた。財閥解体、農地改革などにより、日本に民主主義の基礎を作った。
■国の天下り政策を逆手に取ったシルバーたちのしたたかさ、文句なしに面白く読んだ。大長編を書き上げた後の息抜きとして描いたような、軽いタッチの作品。但し、イントロ部分の、作者本人が実名で顔を出す件は艶消しだった。
(不評)
■小説としては面白く読めたが、最後の落ちが何処にあるのか不明。こういういい加減な構成でも小説になる、という例である。
■この作品は浅田次郎の失敗作。まず、動機が「横領」という犯罪行為であり、どう譲っても受け入れられない。競馬の当たり馬券の件に至ってはもう漫画、構成がメチャクチャで、現実離れしている。映画やドラマになった『天国までの百マイル』は良かったが。
■一回さっと読んだあと、もう一度読み直したが、途中で放り投げた。この作品の主人公たちはほんとうに”Happy retirement”だったのだろうかと思う。以前、債権回収の仕事をしていたことがあるので分かるが、この作品はインパクトに欠ける失敗作だ。
■自衛隊OBというのは皆、このタイプの人間なのだろうか。この小説で学んだのは、➀金を貸して利息をとる、②金を借りて返さない、の2つの金儲けの方法。これをリアルな関西弁で語られると納得してしまう。主人公、立花葵の生き方には共感するところがある。
■天下りの話で、期待して読んだのだが、期待外れだった。作者の他の作品と比べると軽い。話は面白かったが、うーん、どうだろう……。
■こんな天下り先があれば飛んで行きたいと思った。但し、エピローグはショックだった。これはなかった方が良かったと思う。
happyretirement.jpg
スポンサーサイト

第74回読書会 平成29年5月11日(木)黒川博行『破門』角川文庫

第151回直木賞受賞作品、黒川博行『破門』を取り上げた。これまで5回候補に挙がって5回とも落選、6度目で念願の当選を果たした。軽いタッチで読めるエンターテンメント小説として好評を博した。

■10年ほど前に『疫病神』を面白く読んだ。ヤクザの桑原が面白いキャラクターとして描かれている。直木賞作品としては、やや軽い気もする。
■会話展開のストーリーは軽快だが、軽い感じがする。この小説の主題を考えると、もう一つ分からない。ディテールの描写がリアルで、それが賞に結びついたのだろう。
■作者の持ち味は、ストーリーのディテールに拘る描写のリアルさとスピード感、会話で運ぶストーリーのうまさだ。会話の行間に滲む独特の哀愁、ペーソスがいい。会話が地の文章のや役割を果たしている。
■登場するヤクザが皆面白い。桑原は才能があり、頭も切れる。組長、若頭連中も皆、魅力的人物として描かれている。この小説に真の悪党は登場しない。
■話がどんどん会話で進み、読むそばから後ろに消えてゆく。ヤクザの喧嘩哲学を学んだ。また、カジノが銀行の役割をしているとは知らなかった。このネタはそのまま吉本興業に売ったらよい。面白いドタバタ喜劇になろう。
■二宮と桑原の掛け合いが面白く、笑えた。ヤクザ社会の金融システムや、カジノの実態が実にリアルに描かれている。ヤクザの世界が、じめじめと陰湿なものではなく、からっと描かれている。作者の他の作品では『後妻業』がとても面白かった。
■桑原・二宮コンビの掛け合い漫才のテンポで話は進む。舞台は関西で情景が頭に入る。やくざ世界の隠語が分かりにくいが、面白く読めた。映画を見るのが楽しみだ。
■だましの小清水に、最後に桑原が怒るところがリアル。ストーリーの大部分が会話形式で語られるが、行間にヤクザの悲哀、ペーソスがにじむ。
■大体皆さんと同じ感想である。二宮が今後どういう人生を生きて行くのか気になる。ヤクザの世界、銀行として機能するカジノなど、勉強になった。オカメインコのマキが小道具として効いている。
hamonkurokawa.jpg

第73回読書会 平成29年3月9日(木)荻原浩『海の見える理髪店』集英社

第155回直木賞受賞作品『海の見える理髪店』を取り上げた。この作者は初めて読む。読後感が良かった、と好評を博した。

■登場人物は二人。親父の問わず語りと、息子の心理は地の文章で語られる。戦中から戦後にかけての世相が映され、慎太郎刈りが一世を風靡し床屋が大繁盛、ビートルズの出現で長髪が流行り、稼業は落ち目を迎える。脇役の俳優が渋く、いい味を出している。客のつむじの形、頭の傷を見て、別れた自分の息子だと分かるエンディングは秀逸である。
「お母様はご健在ですか」
ええ。亭主が黙り込み、ドライヤーの音だけになった沈黙を破って、ぼくは声をあげた。
「来週、結婚式があるんです」
■これまで歩いてきた自分の一生を振り返っている実感があり、小説の世界に引きずりこまれた。鏡に海を映して客に見せる、何とも切ない。6作品のうちでは『成人式』が特によかった。新成人と一緒に写真を撮るシーンなど、秀逸である。
■淡々と読者に語り掛ける読みやすい文章で、面白く読んだ。二人が親子だったと最後に気づくのだが、この辺りの語り口はうまい。表題作が一番良かった。他の作品はもう一つ。『成人式』に至ってはぶっ飛んだ。
■床屋の親父の問わず語りで、ストーリーが進む。最初は冗漫な語り口だが、次第に引き込まれ、聞き終わると、爽やかな読後感に浸っている自分がいた。客の首にカミソリを当てるシーン、鏡の中の女房の手を握ろうとしても左右が逆でどうしても握れない件等、秀逸な描写が印象に残った。
■最初の3作品がとてもよかった。表題作では、床屋の亭主と客が親子だったと分かる件は、思わず泣けてしまった。自分が今あるのは、父や母や祖父、祖母たちが背中を押してくれたからだと、そんな感謝の気持ちを思い起こさせてくれた作品である。
海の見える理髪店

第72回読書会 平成29年1月12日 フランツ・カフカ『変身』新潮文庫

ドイツの詩人フランツ・カフカの『変身』を取り上げた。寒波襲来で極寒のさなか、11名の同人が集った。

■人間が或る日突然、大きな虫に変身する。なぜ虫になったのか、その理由も経緯もいっさい説明されない。3人の家族は、変身したグレーゴルを見て、最初は驚愕するのだが、次第に、この馬ぐそ虫めは!(お手伝さんの言葉)、と彼を厄介者あつかいにする。一家を支える大黒柱から「馬ぐそ虫」に転落した彼が、のたうち苦悩するさまは、可笑しさとともにペーソスを誘う。ただ、エンディングには救いが待っている。読んでいて漱石の「吾輩は猫である」を思い浮かべた。猫の視点から家の主やその奥さん、子供を観察する手法である。概して、翻訳文学は原文に引きずられ、ぎごちない日本語に陥り勝ちで、特にドイツ語、ロシア語などはそうだ。
■初めて読む作品。短編で、ほっとした。セールスマンとして懸命に働き、家を建てて、両親と妹を養い、4人で暮らすグレーゴルは、ある日突然、大きな虫に変身する。自分の身に何が起こったのか、全く分からない。本人の無念と絶望、家族の困惑の中で、一家は破たんを迎える。やがて、父親の投げたリンゴの傷がもとで、グレーゴルは死ぬ。これを機に、一度は崩壊した家族が、明日への希望を見出し、再生するところで終わる。ここに救いがある。
■最初は、グレーゴルの視点で物語が進み、後半は妹のそれに移って、虫に変身した兄への困惑する様子が語られる。グレーゴルは、父親にリンゴをぶつけられて、その傷がもとで死ぬのだが、その件が悲しく、胸が痛んだ。
■或る日、自分がこんな虫に変身してしまったら一体どうしようと、最後まで絶望感、戦慄に苛まれて読んだ。ただし、エンディングで家族全員が気をとり直し、明日への希望を見出して歩み出す件に、微かな救いがある。
■虫に変身したグレーゴルは、何かのメタフォーだと思うが、読者の環境によっていろいろ違って考えられる。虫は、突然大腸がんに襲われた父親であり、ノルマに追われるセールスマンであり、登校拒否の小学生である。以前の課題本「異邦人」は強烈なインパクトを受けたが、この作品はよくわからない。
■最初、SFと思って読んだが、違った。或る日、一家を支えるセールスマンが突然、一匹の大きな虫に変身する。それはいったいどんな虫、グレーゴルの棲む家の間取りはどんな間取り、などが分かりにくく、虫が天井に張り付いたり、フロアーを這い回ったりし、ドアの隙間から外を伺う場面などは、行動パターンがイメージしにくい。グレーゴルは、痴呆症に陥った厄介者、の地位に追いやられ、それが悲しい。
■サスペンス小説かと思って読んだが、そうではない。虫、とはいったいどんな虫なのか、形状や、どれ位の大きさの、どんな動きをする虫なのか、さっぱりイメージが湧かない。輪廻転生などの宗教観は持っていないようだ。もう少し掘り下げが欲しい。文学としては未完成の作品だと思う。
■高校時代に初めて読んだときは、強い衝撃を受けたが、今回は、それほどではなかった。作者が、何を意図してこの作品を書いたのか、主題が何なのか、よくわからないまま読み終えた。
■100年前に書かれた難解な小説。まったく理解できなかった。作品のテーマを現代に置き換えて読むと、それは公害による奇形、いじめ、人種差別などを訴えているのだろうか。
■難しい、よくわからない。以前にいちど読んで、大した感銘もうけず、今回読み直しても同じ。帯には「世界最高の文学」とあるが、なんでこれが?と腑に落ちない。ただ、終わりに家族に対する救済が訪れ、よかったと、頷いた。
■若いころ一度読み、感銘を受けたが、今回読み返してみて、それほどの感動はなかった。妹の視点に立って読むと、大きな虫に変身した兄の、家庭での立ち位置がよく理解できる。
kahuka.jpg

第71回読書会 平成28年11月10日 池波正太郎『鬼平犯科帳1』文春文庫

ほぼ全員が面白かったとの感想を述べた。
■細切れの時間を使い、文句なしに面白く読める大衆娯楽小説である。
■チャンバラは読みやすい。特に一編々々が短刀直入に語られ、完結しているので次々に読める。殺人、強盗と、何時の時代も世相は同じ。浅草、本所界隈の裏通りが細かく描写され、小説の世界に引き込まれる。
■ドローンで俯瞰しながら江戸の下町をつぶさに観察する、そんな視点で面白く読んだ。描写の巧みさ、メリハリのある文章、読んでいて心地よかった。
■全編、面白く読んだ。泥棒訓①盗まれて難儀するものには手を出さぬ、②つとめするとき、人を殺傷せぬ、③女をてごめにせぬ、を掲げる泥棒・卯三郎の「浅草・御厩河岸」など、面白く読んだ。
■第一巻に納められている8編それぞれ独立した作品だが、人間関係はつながっている。女につまずく男たち、とくに「老盗の夢」が良かった。主人公の平蔵よりも脇役が光っている。
■この作品はTVで見たことも、本で読んだこともないので、最初ストーリーが頭に入りにくかったが、読むうちにその世界に溶け込めた。鬼平を中心とした四囲の人間関係がよかった。
■時代小説はあまり読まぬが、この作品はとても読み易かった。一つには、主人公・長谷川平蔵の生い立ちに触れ、暗い修羅の過去に触れて、その人間性を掘り下げているので、彼の生き方に共感を覚える。鬼平のファンになった。
■司馬遼太郎を好んで読んできたので、こういう軽いタッチの時代小説もあるのだなと、新発見である。2、3行読んでいるうちにいつの間にか小説の世界に引きずり込まれている。語りの巧みさにおどろく。
■時代ものは初めて読む。舞台が江戸の下町で、言葉も江戸弁で語られ、馴染めなかった。殺しや押し込みの殺伐とした話で、8編がそれぞれつながっている。
onihei.jpg

第70回読書会 平成28年9月8日 第70回記念拡大読書会

第1回、2004年12月7日、春山文彦『火花・北条民雄の生涯』を読んで以来12年、今日、70回を迎えた。これを祝い記念拡大読書会とし、懇親会を開いた。
冒頭、読書会創設者の一人であるKUB氏より、同じく創設者の一人・今年物故されたOON氏への献杯の音頭で、団らんの宴に入った。
15名の賑やかな語りのうちに、過去取り上げてきた70冊以上の課題本を振り返った。次回、候補に挙がったのは池波正太郎「鬼平犯科帳」(KIT氏の推薦)。池波作品は初めてで、71回は「鬼平シリーズ」を取り上げることにした。

最近、山の会の物故者が多い。70代、80代と、会員の高齢化が進み、避けられぬ現実を見つめた。逝った仲間を忍んで語り、やがて、山の会の将来運営に話が及んだ。
若い新入会員が増え、クリーンハイク、例会に参加してもほとんど知らぬ顔ばかり、との声が聞かれる。150名の大型会に成長した山の会、これは新陳代謝なのだろう。古い皮膚が死んで新しいそれに生まれ替わる、会の活性化に違いはないが、反面、一抹の寂しさも覚える。もっと積極的に例会に参加すべきなのだろうが、身体がいうことを聞かず、億劫になり勝ちである。出不精になれば、老いの孤島に置き去りにされる。
読書会に参加して課題本を読み、議論に加わり、打ち上げの酒を飲んで、仲間と団らんの時を過ごす、これも孤島から抜け出す手法の一つだ。読書を通して、今まで知らなかった新しい生き方が見えるかもしれない。71回、いっしょに「鬼平範科帳」を読みましょう。(OOM)

第71回読書会のご案内
日時:2016年11月10日(木)18:00~  場所:会事務所
課題本:池波正太郎「鬼平犯科帳(1)」文春文庫
suzu201609.jpg

第69回読書会 平成28年7月14日 藤沢周平『暗殺の年輪』文春文庫

藤沢周平の初期の『黒い縄』『暗殺の年輪』『ただ一撃』『溟い海』『囮』の5作品を集めた短編集を取り上げた。このうち『暗殺の年輪』が第69回直木賞を受賞している。藤沢作品は、これまでも第36回読書会(2014年1月)で『用心棒日月抄』を取り上げている。
■時代小説はけっこう読むが、藤沢周平作品は初めて。『暗殺の年輪』の主人公、馨之介は過酷な運命を背負った下級武士だ。父は切腹、母は馨之介に密通をとがめられ自害する。とにかく暗い話だった。『黒い縄』は推理小説仕立てで面白く読んだ。
■『用心棒日月抄』を読んでいるうちに引き込まれ、シリーズ全4巻を買って読んだ。今回の課題本にも心を打たれた。当分、藤沢周平にはまりそうである。
■『暗殺の年輪』は、下級武士の悲劇を扱ったとてつもなく暗い作品。それにしても暗すぎる、何とかならぬのか、何処にも救いはない。
■作者の情況描写の巧みさに舌を巻く。映像を目の当たりにしているようで、場面、場面が映画のカット割りのように彷彿としてくる。その場の情景を語るだけでストーリーが生き生きと立ち上がってくるその手法は、すごいとしかいいようがない。
■『暗殺の年輪』は暗すぎる、救いのない小説だ、との意見が出たが、救いはある。ラストで主人公が父母の敵を討ち、武士を捨てて居酒屋の娘のもとに走る件は、明日に向けて旅立つ馨之介の門出である。『溟(くら)い海』は人物描写が素晴らしい。北斎、広重、英泉など、人間の内面の葛藤を克明に掘り下げている。
暗殺の年輪

第68回 平成28年5月12日 宮本輝『泥の川・蛍川』新潮文庫

宮本輝は、平成21年2月19日第25回読書会で『優駿』を取り上げて以来2冊目。『泥の川』太宰治賞、『蛍川』芥川賞を受賞。昭和30年代初期の世相を、セピア色の郷愁に滲ませて切り取った秀作。切ない本を読んだと、好評であった。

■昭和初期、皆が貧乏だった時代を懐かしく思い出している。廓(くるわ)船(ぶね)の親子3人が胸を打つ。『泥の川』の悲惨さに比べ『蛍川』は明るい作品で、蛍の乱舞する件(くだり)は圧巻。
■『泥の川』は、イントロ部分の描写がすばらしい。映像化するとすればやはりモノクロだろう。信雄という小学生の視点で描かれているが、まわりの大人たちがじっと少年を見つめている構図である。小説の構成も巧みである。
■カニにたっぷり油を飲ませて火をつけるきっちゃんに、信雄は戦慄を覚える。船べりに逃げるかカニを追ううちに、隣室で男とまぐわう母親と眼が合い、少年は性に目覚める。読後感の重い、なんとも切ない小説である。
■『泥の川』は、お化け鯉が、廓船を吞み込むようにして後を追うラストが圧巻。『蛍川』は、いったん生を受けた限りは、命を大事にし、真摯に生きてゆくことの大切さを教えてくれる。
■『泥の川』は状況描写が分かりにくく作者が何をいいたいのか分からない。『蛍川』は、蛍がまるで川の底から湧き上がるように狂い舞うさまが圧巻で、息を呑む描写である。
■映画で感動、2度みた。泥の河のタイトルは、台風の後の淀川沿いに車で走って浮かんだタイトル。作者のライフワーク『流転の海』は富山を舞台にした作品だが、『蛍川』では、ホタルの乱舞する様を見て大阪行きを決意する件が印象的。
■この小説の時代背景と現代を見くらべ、その違いを改めて思った。『泥の川』は、お化け鯉が小道具として効いている。これを映像化するとすれば白黒しかない。
泥の河

第67回 平成28年3月10日 百田尚樹『影法師』講談社文庫

『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』にづづき、百田尚樹、3冊目を読んだ。ストーリーの面白さにつられ、全員が一気読みした、との由。相変わらず根強い人気を保っている作家である。
■初めて読む作家だが一気に読んだ。武士という厳しい身分制度、掟社会に生きる主人公が恰好良い。
■勘一と彦四郎二人の強いきづなに引き込まれ、一気に読み終えた。勘一の影法師として生きる決意、従容として死につく彦四郎、なんと爽やかなのだろう。
■この作品のテーマは男同士の友情だと思った。現代社会にはこういう次元の人間の絆は存在しないだろう。徳川は、この厳しい身分制度があってこそ、持ちこたえた。それにしても彦四郎の最後は悲しすぎる。
■勘一の守護神・影法師として生きた彦四郎の人生は惨め、悲惨だったのか?そうは思わない。人間を動かす一言のことばの重み、それに殉じた彼は、谷間のわき水のように純で、満足し、死に赴いたにちがいない。
■百田尚樹がこの作品を書いたのは、孔子の儒学を語りたかったのだろう。義・仁・礼・智・信の5徳を説くために、彦四郎という勘一の影法師を創り出した、そういう思いで読んだ。
■ありふれた素材をうまく組み合わせ、巧みな構成で成功している。読後感はとても良かった。高い理想を拒む身分制社会、こんな時代があったのだと、考えさせられる。
■前作『永遠の0』ほどの感動はなかった。面白い、が、それだけで終わっている。読後の爽快感、カタルシスはない。
kagebousi.jpg

第66回 平成28年1月14日 浅田次郎『鉄道員』(ぽっぽや)

浅田次郎『鉄道員』(ぽっぽや)を読んだ。同作者は2005年2月(第2回読書会)で、『メトロに乗って』を取り上げて以来11年ぶり。合評会ではほぼ全員の好評を博した。
■TVで観た高倉健一周忌番組でこの作品が紹介されていたので、課題図書に推薦した。収録された8作品とも、人間同士の触れ合いが巧みに描かれている。浅田次郎は、不器用にしか生きられぬ人間を描くのが巧みである。
■自分の読書パターンは、一度はまったらその作家を徹底的に読むタイプ。浅田作品はどれも奥深い内容のある作品で、読後感もよく、しばらくはこの作家にのめり込みそうだ。素晴らしい作品を推挙してくれた同人に感謝する。
■日本人的な、泣かせの名作短編集である。現実とあの世のはざまに、美しい情景描写と名ゼッリフをダブらせ、心を揺さぶる。表題作『鉄道員』(ぽっぽや)も良かったが、『ラブレター』、『盂蘭盆会』も秀逸な作品だ。数十ページの中に簡潔に人生を描き、不器用にしか生きられぬ人間の生き方に、涙腺が緩んでしまった。
■浅田次郎が上手い、と思うのは、現実と非現実、シュールの世界を巧みに交錯させながら、境界の区別がつかなくなる程に、読者を物語の世界に引きずり込む手法である。例えば、『メトロに乗って』では、地下鉄銀座線の赤坂見附に向かう地下道を歩いているうちに道に迷い、階段を上がると、そこは終戦直後の闇市の世界で、露天の食い物屋の饐えた匂いが充満する赤坂見附の雑踏である。『鉄道員』(ぽっぽや)では、目の前に死んだ娘が現れて、子供時代から、中学・高校、へと成長してゆく過程を、一瞬のシュールの世界として描き出している。お勧め本は『天切り松・闇語り』、明治末期から大正、昭和初期にかけての物語である。『天国への百マイル』も泣けた。おふくろを看取る話で、極道なあにきに送って読ませた。
■人情味あふれる作品で、泣かされた。自分は、ファンタジー小説はあまり好きでない。『鉄道員』(ぽっぽや)で、死んだ娘が幽霊になって出てくる件は、感心しない。
■この作品には、帯広線など、不採算で廃止になるローカル線の悲哀がにじみ出ている。鉄道で働く「ぽっぽや」たちの誇り、苦労、悲しみを謳い上げた名作である。
■「列車がトンネルに入ると慌てて窓を閉めた。」、あの一こまを懐かしく思い出している。昭和の初期、今考えると、良い時代だった。無駄のない文章、特に会話がうまい。会話での語り口を通して、読者に、その場の情景をありありと浮かび上がらせる。
■8作品を集めた短編集だが、どれも秀逸な作品である。浅田次郎は好きな作家で、よく読む。長編『蒼穹の昴』は2度読み直した。この作家は卓越した描写力で、場面々々を彷彿とさせる。余韻を残すエンディングもうまい。
■浅田次郎は『メトロに乗って』を読んだのが初めて。『鉄道員』(ぽっぽや)は高倉健主演の映画でみたが、映像とはだいぶ違う印象で読んだ。人間関係が、登場人物の目線で細かく描かれていて、主人公の仕事に対する責任感、一家を支える主の決意が見える。爽やかな読後感で読み終えた。
■この作品を読み、「ぽっぽや」は昭和の遺産、と感じた。石炭を焚いて走る列車の旅など、今の若者には想像もつかぬだろう。スピード万能の申し子・新幹線、リニアカーでの旅など、ロマンのかけらもない。自分は20年生まれ、昭和は遠くなりにけり、である。
51ktJlhtnpL.jpg
« | HOME |  »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。