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第78回読書会 平成30年5月10日(木)湊かなえ『贖罪』東京創元社

今年4月、湊かなえ『贖罪』はアメリカのミステリー大賞「エドガー賞」にノミネートされたが受賞を逃した。日本人のノミネートは桐野夏生、東野圭吾につづき3人目だが、何れも獲れなかった。誰が獲るか? そんな期待感でこの作品を読んだ。
■200万部のヒット作品。読みやすく、人間の持つ毒性、心の闇の部分を描き出した面白い作品。
■一人の人間の発した言葉が他人の人生を大きく狂わせる。そんな恐ろしさを覚えながら読んだ。言葉の捉え方は聞く人間によって様々で、4人を犯罪に走らせる。
■15年後、結びで母親が4人に詫びるがが、もう遅い。いったん口に出した言葉は取り返しがつかない。
■難しい小説だ。芥川龍之介の『藪の中』を思わせ、誰の言い分が正しいのか迷う。場面転換が目まぐるしく、言葉が先へ先へと飛んで、結末が見通せない。
■この小説の主題は何なのだろう。作者が何を訴えたいのか、よく理解できない。5人の少女と母親の関係が分かりにくい。3度読んでやっとその輪郭がはっきりした。
■話を創りすぎて、どこか現実離れしている。母親・麻子の罪は重く、弁明の余地はない。『火車』はミステリーとして秀逸だが、この作品は今一ついただけなかった。
■『告白』を読んでファンになった。この作品も同じ流れでストーリーが展開する。人間関係が複雑で、ノートに書きだし、整理して読んだ。やはり母親・麻子の一言が4人を不幸にした。言葉が相手を傷つけ、殺人にまで追い込んだ例である。
■加害者も被害者もみんな悪者で、現代社会の一断面を切り取っている。『告白』も読んだが、内容はほぼ一緒だ。
贖罪
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第77回読書会 平成30年3月8日(木)カズオ・イシグロ『日の名残り』早川文庫

初めて読む作家、カズオ・イシグロの『日の名残り』を取り上げた。格調高い小説であると、好評であった。昨年末、ノーベル文学賞を受賞。代表作のこの作品は、1989年にイギリス・ブッカー賞(日本の芥川賞に相当)を受賞している。
■ブッカー賞受賞後すぐにPaperBackで読み、以来、彼のファンになった。昨年、村上春樹に先がけてノーベル文学賞を受賞したのは、この作品と昨年、テレビドラマにもなった『わたしを放さないで』が引き金になっていると思う。私もこのタイトルは好きで、同じタイトルで立ち飲み屋で一杯やる短編小説を書いたことがある。
■翻訳者の文章が素晴らしい。分かりやすく、格調高い日本語で、作品の良さを余すところなく伝えている。深い感銘を受けた。「執事」というイギリス階級社会独特の職業に命を懸ける主人公スティーブンス。その生き様に感動を覚えた。非常によかった。
■まず、翻訳が素晴らしい。執事という、日本にはない制度を描き切って、それを大英帝国の残照のなかに映し出した作者の力量を買う。完全な日本人の血だが、その発想はアングロサクソンのそれである。
■読みやすい日本語で、分かりやすかった。イギリスの貴族階級というのは、桁外れにリッチなのだと、驚いた。執事の品性、見上げたものである。
■本のタイトルがすべてを語っている。実にうまいタイトルを付けたものだ。スティーブンスは執事に誇りを感じ、愚直なまでに忠実に責務を果たした男だ。その生きざまは決して不幸ではない、恵まれた人生だったと思う。読み終え、本を置くと、もどかしさ、やり切れなさ、切なさのような何かが、重い余韻として残った。
■現在と過去との間を目まぐるしく移動し、それに翻弄される部分はあるが、大英帝国の歴史を活写した名作である。執事を失職して、新たなアメリカ人につかえることになるが、「これからはジョークの勉強をしよう」という彼の言葉が印象に残った。
■日本語の翻訳がとてもよかった。以前に映画で見た。『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスが主演で、主人公の執事スティーブンスを見事に演じ切っていた。広大な貴族の屋敷だったダーリントン・ホールを舞台に繰り広げられる物語は、陰りゆく大英帝国の“日の名残り”を目の当たりにするようだ。スティーブンスと女中頭の淡い恋は、後ろ髪を引かれるもどかしさがある。
いま、大河ドラマ『西郷(せご)どん』にのめり込んでいる。ほんのごて、こん作品はごっちゃんじゃった。読んでくりゃい! お頼みもす。
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第76回読書会 平成30年1月11日(木)黒川博行『後妻業』文春文庫

第74回『破門』に続き黒川作品。都合で読書会が昨年9月、11月と2度延期されたが、年明けの1月、やっと課題本『後妻業』が読めた。
■本のタイトルが面白い。結婚相談所を根城に、後妻業をビジネスとして展開、孤独な老人たちの後添えに入り込んで、巨万の富を手中にする。面白い発想である。
■この小説の主人公は69歳の色黒の淫乱女・竹内小夜子と、結婚相談所の所長・柏木だが、ストーリーのリード役はマル暴担当の元刑事・本田である。中盤からの彼の登場で俄然、物語が動き出す。何といっても掛け合い漫才のような大阪弁の会話がよく、この話のすごさは、大阪弁以外では語れなかったと思う。本田には憎めぬペーソスが漂う。
■花登筐の作品を思いだした。大阪を舞台とし、テンポの早い大阪弁が耳に心地よく飛び交う。最後まで面白く、一気に読めた。
■一度読んだが、時間が経ちすぎて忘れ、再読して、映画も見た。大竹しのぶ、豊川悦司の演技が秀逸で、印象に残っている。仕事柄、公正証書作成の証人になった事があり、この小説はリアルで、真に迫り、面白く読めた。
■前回読んだ『破門』と同じパターンの展開。やくざと大阪弁、今回は公正証書の威力を思い知った。映画はいまいちで、本で読む方が良かった。
■『破門』は面白かったし、この作品も楽しく読めた。住民票を移して家財道具を持ち込めば財産相続できる、というのは法の抜け穴で、大いに参考になった。
■公正証書遺言と遺言書の違い、後見人による犯罪はこの盲点を突いている。
■小説は映画よりも一層リアルで、より面白かった。読書会のみなさん、孤独な老人にならぬよう、十分お気をおつけくださいまし。
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第75回読書会 平成29年7月13日(木)浅田次郎『ハッピー・リタイアメント』幻冬舎文庫

全体的に不評、賛同者は二人だけだった。
(好評)
■痛快娯楽作として読んだ。特にマッカーサー元帥の功績については、いろいろと教えられた。財閥解体、農地改革などにより、日本に民主主義の基礎を作った。
■国の天下り政策を逆手に取ったシルバーたちのしたたかさ、文句なしに面白く読んだ。大長編を書き上げた後の息抜きとして描いたような、軽いタッチの作品。但し、イントロ部分の、作者本人が実名で顔を出す件は艶消しだった。
(不評)
■小説としては面白く読めたが、最後の落ちが何処にあるのか不明。こういういい加減な構成でも小説になる、という例である。
■この作品は浅田次郎の失敗作。まず、動機が「横領」という犯罪行為であり、どう譲っても受け入れられない。競馬の当たり馬券の件に至ってはもう漫画、構成がメチャクチャで、現実離れしている。映画やドラマになった『天国までの百マイル』は良かったが。
■一回さっと読んだあと、もう一度読み直したが、途中で放り投げた。この作品の主人公たちはほんとうに”Happy retirement”だったのだろうかと思う。以前、債権回収の仕事をしていたことがあるので分かるが、この作品はインパクトに欠ける失敗作だ。
■自衛隊OBというのは皆、このタイプの人間なのだろうか。この小説で学んだのは、➀金を貸して利息をとる、②金を借りて返さない、の2つの金儲けの方法。これをリアルな関西弁で語られると納得してしまう。主人公、立花葵の生き方には共感するところがある。
■天下りの話で、期待して読んだのだが、期待外れだった。作者の他の作品と比べると軽い。話は面白かったが、うーん、どうだろう……。
■こんな天下り先があれば飛んで行きたいと思った。但し、エピローグはショックだった。これはなかった方が良かったと思う。
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第74回読書会 平成29年5月11日(木)黒川博行『破門』角川文庫

第151回直木賞受賞作品、黒川博行『破門』を取り上げた。これまで5回候補に挙がって5回とも落選、6度目で念願の当選を果たした。軽いタッチで読めるエンターテンメント小説として好評を博した。

■10年ほど前に『疫病神』を面白く読んだ。ヤクザの桑原が面白いキャラクターとして描かれている。直木賞作品としては、やや軽い気もする。
■会話展開のストーリーは軽快だが、軽い感じがする。この小説の主題を考えると、もう一つ分からない。ディテールの描写がリアルで、それが賞に結びついたのだろう。
■作者の持ち味は、ストーリーのディテールに拘る描写のリアルさとスピード感、会話で運ぶストーリーのうまさだ。会話の行間に滲む独特の哀愁、ペーソスがいい。会話が地の文章のや役割を果たしている。
■登場するヤクザが皆面白い。桑原は才能があり、頭も切れる。組長、若頭連中も皆、魅力的人物として描かれている。この小説に真の悪党は登場しない。
■話がどんどん会話で進み、読むそばから後ろに消えてゆく。ヤクザの喧嘩哲学を学んだ。また、カジノが銀行の役割をしているとは知らなかった。このネタはそのまま吉本興業に売ったらよい。面白いドタバタ喜劇になろう。
■二宮と桑原の掛け合いが面白く、笑えた。ヤクザ社会の金融システムや、カジノの実態が実にリアルに描かれている。ヤクザの世界が、じめじめと陰湿なものではなく、からっと描かれている。作者の他の作品では『後妻業』がとても面白かった。
■桑原・二宮コンビの掛け合い漫才のテンポで話は進む。舞台は関西で情景が頭に入る。やくざ世界の隠語が分かりにくいが、面白く読めた。映画を見るのが楽しみだ。
■だましの小清水に、最後に桑原が怒るところがリアル。ストーリーの大部分が会話形式で語られるが、行間にヤクザの悲哀、ペーソスがにじむ。
■大体皆さんと同じ感想である。二宮が今後どういう人生を生きて行くのか気になる。ヤクザの世界、銀行として機能するカジノなど、勉強になった。オカメインコのマキが小道具として効いている。
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第73回読書会 平成29年3月9日(木)荻原浩『海の見える理髪店』集英社

第155回直木賞受賞作品『海の見える理髪店』を取り上げた。この作者は初めて読む。読後感が良かった、と好評を博した。

■登場人物は二人。親父の問わず語りと、息子の心理は地の文章で語られる。戦中から戦後にかけての世相が映され、慎太郎刈りが一世を風靡し床屋が大繁盛、ビートルズの出現で長髪が流行り、稼業は落ち目を迎える。脇役の俳優が渋く、いい味を出している。客のつむじの形、頭の傷を見て、別れた自分の息子だと分かるエンディングは秀逸である。
「お母様はご健在ですか」
ええ。亭主が黙り込み、ドライヤーの音だけになった沈黙を破って、ぼくは声をあげた。
「来週、結婚式があるんです」
■これまで歩いてきた自分の一生を振り返っている実感があり、小説の世界に引きずりこまれた。鏡に海を映して客に見せる、何とも切ない。6作品のうちでは『成人式』が特によかった。新成人と一緒に写真を撮るシーンなど、秀逸である。
■淡々と読者に語り掛ける読みやすい文章で、面白く読んだ。二人が親子だったと最後に気づくのだが、この辺りの語り口はうまい。表題作が一番良かった。他の作品はもう一つ。『成人式』に至ってはぶっ飛んだ。
■床屋の親父の問わず語りで、ストーリーが進む。最初は冗漫な語り口だが、次第に引き込まれ、聞き終わると、爽やかな読後感に浸っている自分がいた。客の首にカミソリを当てるシーン、鏡の中の女房の手を握ろうとしても左右が逆でどうしても握れない件等、秀逸な描写が印象に残った。
■最初の3作品がとてもよかった。表題作では、床屋の亭主と客が親子だったと分かる件は、思わず泣けてしまった。自分が今あるのは、父や母や祖父、祖母たちが背中を押してくれたからだと、そんな感謝の気持ちを思い起こさせてくれた作品である。
海の見える理髪店

第72回読書会 平成29年1月12日 フランツ・カフカ『変身』新潮文庫

ドイツの詩人フランツ・カフカの『変身』を取り上げた。寒波襲来で極寒のさなか、11名の同人が集った。

■人間が或る日突然、大きな虫に変身する。なぜ虫になったのか、その理由も経緯もいっさい説明されない。3人の家族は、変身したグレーゴルを見て、最初は驚愕するのだが、次第に、この馬ぐそ虫めは!(お手伝さんの言葉)、と彼を厄介者あつかいにする。一家を支える大黒柱から「馬ぐそ虫」に転落した彼が、のたうち苦悩するさまは、可笑しさとともにペーソスを誘う。ただ、エンディングには救いが待っている。読んでいて漱石の「吾輩は猫である」を思い浮かべた。猫の視点から家の主やその奥さん、子供を観察する手法である。概して、翻訳文学は原文に引きずられ、ぎごちない日本語に陥り勝ちで、特にドイツ語、ロシア語などはそうだ。
■初めて読む作品。短編で、ほっとした。セールスマンとして懸命に働き、家を建てて、両親と妹を養い、4人で暮らすグレーゴルは、ある日突然、大きな虫に変身する。自分の身に何が起こったのか、全く分からない。本人の無念と絶望、家族の困惑の中で、一家は破たんを迎える。やがて、父親の投げたリンゴの傷がもとで、グレーゴルは死ぬ。これを機に、一度は崩壊した家族が、明日への希望を見出し、再生するところで終わる。ここに救いがある。
■最初は、グレーゴルの視点で物語が進み、後半は妹のそれに移って、虫に変身した兄への困惑する様子が語られる。グレーゴルは、父親にリンゴをぶつけられて、その傷がもとで死ぬのだが、その件が悲しく、胸が痛んだ。
■或る日、自分がこんな虫に変身してしまったら一体どうしようと、最後まで絶望感、戦慄に苛まれて読んだ。ただし、エンディングで家族全員が気をとり直し、明日への希望を見出して歩み出す件に、微かな救いがある。
■虫に変身したグレーゴルは、何かのメタフォーだと思うが、読者の環境によっていろいろ違って考えられる。虫は、突然大腸がんに襲われた父親であり、ノルマに追われるセールスマンであり、登校拒否の小学生である。以前の課題本「異邦人」は強烈なインパクトを受けたが、この作品はよくわからない。
■最初、SFと思って読んだが、違った。或る日、一家を支えるセールスマンが突然、一匹の大きな虫に変身する。それはいったいどんな虫、グレーゴルの棲む家の間取りはどんな間取り、などが分かりにくく、虫が天井に張り付いたり、フロアーを這い回ったりし、ドアの隙間から外を伺う場面などは、行動パターンがイメージしにくい。グレーゴルは、痴呆症に陥った厄介者、の地位に追いやられ、それが悲しい。
■サスペンス小説かと思って読んだが、そうではない。虫、とはいったいどんな虫なのか、形状や、どれ位の大きさの、どんな動きをする虫なのか、さっぱりイメージが湧かない。輪廻転生などの宗教観は持っていないようだ。もう少し掘り下げが欲しい。文学としては未完成の作品だと思う。
■高校時代に初めて読んだときは、強い衝撃を受けたが、今回は、それほどではなかった。作者が、何を意図してこの作品を書いたのか、主題が何なのか、よくわからないまま読み終えた。
■100年前に書かれた難解な小説。まったく理解できなかった。作品のテーマを現代に置き換えて読むと、それは公害による奇形、いじめ、人種差別などを訴えているのだろうか。
■難しい、よくわからない。以前にいちど読んで、大した感銘もうけず、今回読み直しても同じ。帯には「世界最高の文学」とあるが、なんでこれが?と腑に落ちない。ただ、終わりに家族に対する救済が訪れ、よかったと、頷いた。
■若いころ一度読み、感銘を受けたが、今回読み返してみて、それほどの感動はなかった。妹の視点に立って読むと、大きな虫に変身した兄の、家庭での立ち位置がよく理解できる。
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第71回読書会 平成28年11月10日 池波正太郎『鬼平犯科帳1』文春文庫

ほぼ全員が面白かったとの感想を述べた。
■細切れの時間を使い、文句なしに面白く読める大衆娯楽小説である。
■チャンバラは読みやすい。特に一編々々が短刀直入に語られ、完結しているので次々に読める。殺人、強盗と、何時の時代も世相は同じ。浅草、本所界隈の裏通りが細かく描写され、小説の世界に引き込まれる。
■ドローンで俯瞰しながら江戸の下町をつぶさに観察する、そんな視点で面白く読んだ。描写の巧みさ、メリハリのある文章、読んでいて心地よかった。
■全編、面白く読んだ。泥棒訓①盗まれて難儀するものには手を出さぬ、②つとめするとき、人を殺傷せぬ、③女をてごめにせぬ、を掲げる泥棒・卯三郎の「浅草・御厩河岸」など、面白く読んだ。
■第一巻に納められている8編それぞれ独立した作品だが、人間関係はつながっている。女につまずく男たち、とくに「老盗の夢」が良かった。主人公の平蔵よりも脇役が光っている。
■この作品はTVで見たことも、本で読んだこともないので、最初ストーリーが頭に入りにくかったが、読むうちにその世界に溶け込めた。鬼平を中心とした四囲の人間関係がよかった。
■時代小説はあまり読まぬが、この作品はとても読み易かった。一つには、主人公・長谷川平蔵の生い立ちに触れ、暗い修羅の過去に触れて、その人間性を掘り下げているので、彼の生き方に共感を覚える。鬼平のファンになった。
■司馬遼太郎を好んで読んできたので、こういう軽いタッチの時代小説もあるのだなと、新発見である。2、3行読んでいるうちにいつの間にか小説の世界に引きずり込まれている。語りの巧みさにおどろく。
■時代ものは初めて読む。舞台が江戸の下町で、言葉も江戸弁で語られ、馴染めなかった。殺しや押し込みの殺伐とした話で、8編がそれぞれつながっている。
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第70回読書会 平成28年9月8日 第70回記念拡大読書会

第1回、2004年12月7日、春山文彦『火花・北条民雄の生涯』を読んで以来12年、今日、70回を迎えた。これを祝い記念拡大読書会とし、懇親会を開いた。
冒頭、読書会創設者の一人であるKUB氏より、同じく創設者の一人・今年物故されたOON氏への献杯の音頭で、団らんの宴に入った。
15名の賑やかな語りのうちに、過去取り上げてきた70冊以上の課題本を振り返った。次回、候補に挙がったのは池波正太郎「鬼平犯科帳」(KIT氏の推薦)。池波作品は初めてで、71回は「鬼平シリーズ」を取り上げることにした。

最近、山の会の物故者が多い。70代、80代と、会員の高齢化が進み、避けられぬ現実を見つめた。逝った仲間を忍んで語り、やがて、山の会の将来運営に話が及んだ。
若い新入会員が増え、クリーンハイク、例会に参加してもほとんど知らぬ顔ばかり、との声が聞かれる。150名の大型会に成長した山の会、これは新陳代謝なのだろう。古い皮膚が死んで新しいそれに生まれ替わる、会の活性化に違いはないが、反面、一抹の寂しさも覚える。もっと積極的に例会に参加すべきなのだろうが、身体がいうことを聞かず、億劫になり勝ちである。出不精になれば、老いの孤島に置き去りにされる。
読書会に参加して課題本を読み、議論に加わり、打ち上げの酒を飲んで、仲間と団らんの時を過ごす、これも孤島から抜け出す手法の一つだ。読書を通して、今まで知らなかった新しい生き方が見えるかもしれない。71回、いっしょに「鬼平範科帳」を読みましょう。(OOM)

第71回読書会のご案内
日時:2016年11月10日(木)18:00~  場所:会事務所
課題本:池波正太郎「鬼平犯科帳(1)」文春文庫
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第69回読書会 平成28年7月14日 藤沢周平『暗殺の年輪』文春文庫

藤沢周平の初期の『黒い縄』『暗殺の年輪』『ただ一撃』『溟い海』『囮』の5作品を集めた短編集を取り上げた。このうち『暗殺の年輪』が第69回直木賞を受賞している。藤沢作品は、これまでも第36回読書会(2014年1月)で『用心棒日月抄』を取り上げている。
■時代小説はけっこう読むが、藤沢周平作品は初めて。『暗殺の年輪』の主人公、馨之介は過酷な運命を背負った下級武士だ。父は切腹、母は馨之介に密通をとがめられ自害する。とにかく暗い話だった。『黒い縄』は推理小説仕立てで面白く読んだ。
■『用心棒日月抄』を読んでいるうちに引き込まれ、シリーズ全4巻を買って読んだ。今回の課題本にも心を打たれた。当分、藤沢周平にはまりそうである。
■『暗殺の年輪』は、下級武士の悲劇を扱ったとてつもなく暗い作品。それにしても暗すぎる、何とかならぬのか、何処にも救いはない。
■作者の情況描写の巧みさに舌を巻く。映像を目の当たりにしているようで、場面、場面が映画のカット割りのように彷彿としてくる。その場の情景を語るだけでストーリーが生き生きと立ち上がってくるその手法は、すごいとしかいいようがない。
■『暗殺の年輪』は暗すぎる、救いのない小説だ、との意見が出たが、救いはある。ラストで主人公が父母の敵を討ち、武士を捨てて居酒屋の娘のもとに走る件は、明日に向けて旅立つ馨之介の門出である。『溟(くら)い海』は人物描写が素晴らしい。北斎、広重、英泉など、人間の内面の葛藤を克明に掘り下げている。
暗殺の年輪
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