東野圭吾の最新刊を取り上げた。以前に直木賞受賞作『容疑者Xの献身』を読んだが、今回も好評を博した。作者の旺盛な創作意欲に頭が下がる。
■軽薄ですべてがちゃらんぽらんな玲斗が、千船の出現と同時に徐々に成長していく過程が面白い。ラストのどんでん返しは見もの。血筋の重さを感じさせる作品。
■さすが人気作家の作品である。飽きのこないストーリー展開、人物設定が正確で、面白く読み終えた。自分はクスノキに祈念するものは何もない、子どもに受け継いでほしいものもない。伝えるものがなくて平凡に人生を終える自分に感謝、幸せだ。
■テンポの速い読みやすい作品で、まるで二時間ドラマを見るように面白く読み終えた。ダメ人間の玲斗が千船の教育で成長していく様が面白い。さすが人気作家、一気に読み終えた。
■家族関係が分かりにくかったが、エンディングできれいに整理され、納得が行った。作者の技量で面白いエンターテインメント小説に仕上がっている。
■人の秘密を簡単に漏らしてしまう軽薄な主人公・玲斗は、最後まで好きになれなかった。しかしラストですべての辻褄が合い、読者を納得させる作者の力量はやはりすごいと思う。
■自分は和歌山出身で、お城の入り口に大きなクスノキが立っており、昔を思い出しながら読んだ。作者が「時々、小さな奇跡を書きたくなる」と語っているように祈念者と受念者とを結びつける奇跡がここでは描かれている。
■日頃はiPad専門だが、久しぶりに紙の本で読んだ。玲斗と千船の血のつながりが、クスノキという霊木を介して祈念、受念の奇跡を実現させるハッピーエンドなお話。作者はさすがに一流のエンターテイナーである。
■祈念、受念というミラクルは入っていきにくい小道具だが、作者一流のストーリー展開で、最後は十分に読ませる作品に仕上げている。
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浅田次郎の作品は何回か取り上げている。今回はこの春に出版された新作を読み、好評を得た。いつもながらの絶妙な語り口に、浅田次郎健在なり、と嬉しくなった。
■姦通罪で切腹を拒んだ旗本が蝦夷松前藩に流罪となり、見習い与力が身柄引き渡し場の青森の三厩まで押送する道中記である。二人の掛け合い漫才のような絡みが面白い。ラストで「いいえ、玄蕃葉様」と初めて尊厳を込めて相手の名前を呼ぶ場面が重い。姦通は冤罪であると明かされるのだが、旗本・青山玄蕃のものの考え方が潔い。
■へそ曲がりの旗本を、まだ十代の与力が青森まで送り届ける道中記。さまざまなエピソードの裡に武士の悲哀、徳川末期の社会の混乱ぶりを活写したエンターテインメント小説で、「天切り松闇語り」の語りを思い出す。上巻ラストの上州無宿稲妻小蔵・勝蔵と飯盛り女おえいの絡みが面白い。浅田次郎の真骨頂をみた。
■面白く読んだ。ただ不義密通で切腹の沙汰を受け「痛えから嫌だ」と天下の旗本が拒否するだろうか? ラストで冤罪と分かって納得した。旅先で病にかかった旅人は、その藩の責任で郷里まで送り届けるというしきたりがあったのは面白い。この作品には実際の例があって、作者はそれを掘り起こして小説に仕立て上げたのではないか。
■切腹を拒んだ直参旗本が流罪となる冒頭は、結末はどうなるのかと気になり、ラストまで一気に読んだ。浅田次郎の語りのうまさに引き込まれ、上手い! と膝を打った。この旗本は神道無念流の達人で、剣の教えが彼の生存哲学の根底にある。
■面白く読んだ。この小説は映像化したらもっと面白くなる。キャストは若い与力役に菅田将暉、旗本役は役所広司がぴったりだ。理解できぬのは、切腹を拒んで生き恥をさらす真の目的が何なのかが、明らかにされてない。討ち入りをあきらめた大石内蔵助のようで、不完全燃焼気味の読後感が残ったことは残念である。
■時代物は苦手で188頁までしか読んでいない。姦通罪は冤罪だろうと予測できたが、この旗本の立ち居振る舞いがなんとも粋で爽やかである。作者の筆力が光る。
■腹を切らずに文句ばかりいう旗本のおっさんが面白い。“ぼく”という表現はこの時代に使われたのだろうか。
2022年2月に始まったロシア軍によるウクライナ侵略、「ウクライナ戦争」を取り上げた。昨今のトップニュースとして直接、間接に日常に関わるテーマに、いつになくホットな議論が起こり、熱くなった。
■小泉悠は、クラウゼビッツの『戦争論』・三位一体論を引用し、「国と軍隊と国民が完全に一つにならなければ戦争には勝てない」という視点で、明快に解き明かす。もっとも恥ずべき手段、つまり、テロと情報戦の組み合わせ、人権侵害、絶対的独裁、大量破壊兵器での威嚇を戦略とする限り、ロシアの命日は限られている、とする。
■この本は、戦争の経緯がよく分かり、痛快だった。ワグネルの傭兵が戦死しても行方不明と処理され、そこに、賠償金を払いたくないロシアの本音が垣間見える。兵隊は消耗品、これがロシアの戦争哲学だ。小泉悠はBS-TBS「報道1930」のレギュラーコメンテーターとしての解説も明快。軍事オタクだったが、この戦争で一挙に檜舞台に躍り出た。
■ヒットラーの亡霊に化身したプーチンが仕掛けた侵略戦争だ。着地点は彼が暗殺された後、天文学的賠償金を背負ってロシア帝国が地に堕ちる、というシナリオ以外にないと思う。狂った独裁者と心中しようとする国家の悲劇がここにある。
■ウクライナの独立は認めぬ、という勝手な論理は何処から出てくのか。9年前のクリミア併合は、64%のロシア系住民で支持されたが、今回も同じ理屈で併合できると踏んだのは、プーチンの大きな誤算だった。先ず、兵士の士気からしてちがう。
■ウクライナもベラルーシも同じロシア人。そこを何故攻めるのか、その理屈が理解できない。日本の「戦争放棄」のスタンスは今、通用しなくなってきている。
■ウイルス禍の只中に起きたこの戦争は悪夢だ。どう決着がつくか先が見えない。コロナ、異常気象による天変地異、目の前の戦争、私たちは今、末世に生きている。
■難しい本だった。この戦争がどういう形で終わるのか、ウクライナとロシアの戦後像を示唆するような本があればぜひ読みたい。
■まだ読んでいない。ロシアが負けることを祈るが、まだ先は分からん。あとはターミネーター(終結させるもの)の出現を待つのみである。
司馬遼太郎『最後の将軍』を読んだ。主人公の徳川慶喜は2021年NHK大河ドラマ『晴天を衝け』にも重要な役割で登場していた。
■作者の的確な人物像のとらえ方や、生きざまを流れるようなストーリーに仕立て上げる手腕はさすが。徳川慶喜の生き方に感動を覚えた。水戸光圀の伝統を引き継ぎ、幼少から厳しく仕込まれた人を見る目は確か。
■司馬作品は読みつくした。どの作品を取って見ても、主人公を見つめる著者の温かい視線が感じられる。作者も語っているが、徳川慶喜はどうしても書きたかった人物の一人で、歴代将軍の中で、最も有能で、最も多才で、最もよく先の見えた人間だった。
■幕府最後の将軍・慶喜は才気あふれる人物で、自分の使命は、ヨーロッパ列強から日本を守ることと悟り、世間からは卑怯な将軍と批判されながらも、淡々と王政復古に向けて進んだ不退転の心意気は、西郷や大久保を遥かにしのぐ最大の功労者である。
■司馬遼太郎の歴史小説はフィクションであるが、登場人物の行動の動機がよく分かり面白い。
5年ほど前から、山の会でもNHK大河ドラマの現場を訪ねる例会を組んでいる。先日も二条城を見学に訪れた。在京40藩主を大広間に集め、慶喜が大政奉還の決意を語る様子が飾り人形で再現されていた。歴史が動いた瞬間を目の当たりにする思いがした。
■司馬遼太郎の作品ということで読む気になった。徳川慶喜は大政奉還という偉業を成し遂げ、大正2年、77歳で没するまで輝き続けた歴史上の偉人。
■大河ドラマの渋沢栄一との絡みで、場面々々を思い出しながら面白く読んだ。
■歴史には弱いが、今回はNHK大河ドラマ『晴天を衝け』と重ね合わせて読み、理解できた。
■歴史は苦手で、今回も40ページまで読んでギブアップ。ただ側近に対して手取り足取り作法を教えるさまは、慶喜の生来の優しさを物語っていると思う。
第100回記念読書会は、沢木耕太郎著『凍』を取り上げた。山の会にふさわしい、極北のクライマー、山野井泰史・妙子夫妻のギャチュンカン登攀記録である。全員が神を見る思いで読み終えた。
昨2021年11月、山野井泰史氏は、世界で13人目、日本人としては初めて「クライミング界のアカデミー賞」とも称されるピオレドール(金のピッケル)賞の生涯功労賞を受賞されている。
■山野井泰史は世界有数のクライマーで、名前はよく知っていた。山に向かう真摯な姿勢がすばらしく、ソロ登山の新しい手法を世に問い、ギャチュンカン登攀はまさに神の技としか思えない。沢木耕太郎の秀逸な文章、心洗われる思いで読み終えた。
■こんなクライマーがいたのだと、足がすくみ、寒さに縮みながら読み終えた。料理人兼シェルパのギャルチェンが光る。二人をベースキャンプで待ち続け、遭難救助隊を呼びに走る件はヒマラヤのサムライ、武士道精神をほうふつとさせる。これでボーナス500ドルは安いだろう。山野井泰史の背中におぶさり、一緒に氷壁をよじ登っていると錯覚させる沢木耕太郎の筆力は鋭く、リアルである。
■「壮絶」の一言に尽きる。一体何が彼をしてかくも過酷な挑戦に走らせたのだろうか。二人の老後の生活が大丈夫か心配である。
■以前、NHKに出演されていた。カメラが奥多摩の自宅に入って、その質素な生活に感動した。ほぼ自給自足で、お金は二人とも全部山に使う。リハビリ担当医の「残った3本の指を活かすように。失った指を忘れられないと残った指が発達しない」の一言は重い。九死に一生の極限状況にあって錆びた空き缶を拾って帰る件は、山に向かう真摯さを雄弁に語る。
■昨年、主人公がピオレドール賞を獲ったと聞いて興味を持ち、手に取った。布団の中にくるまりながら読んだのだが、リアルな氷の世界の描写に体が凍る思いがした。妻・妙子さんの生きざま、考え方、強さがすばらしい。深い感銘を受けた。
■5年前に読んで、読みながら体が凍えた感覚を覚えている。究極のクライマーとしてピオレドール賞を受賞したその陰には、妻・妙子さんの日常的サポートがあった。二人とも、並みのクライマーではない。
■山野井泰史のことは以前から知っていた。ピオレドール賞を獲ったきっかけに読んでみたいと思い、課題本に取り上げてもらった。彼もさることながら、妙子さんがすごい。彼と知り合う前から、凍傷で指十本をなくしていたのだから。
第99回読書会は、第144回芥川賞受賞作、西村賢太『苦役列車』を取り上げた。
■複雑な家庭事情から、中学を卒業すると同時に日銭の入る人足仕事に身をやつし、そのあけっぴろげな人生の底辺をさらけ出して第144回芥川賞を取った。旧来の一連の芥川賞作品とは一線を画し、久しぶりに手ごたえのある小説を読んだ。選考会では石原慎太郎が強く推し、受賞に至った。
■内面を赤裸々に吐露した私小説で、石原慎太郎が激賞したが、昨2021年、心臓疾患で早世した。人夫仕事で日銭を稼ぎ、その日暮らしの放埓な生活を送りながら、私小説作家・藤沢清造に師事して執筆、芥川賞に輝いた。現在、藤沢清造の『根津権現裏』を読んでいるところだが、西村賢太顔負けの破天荒な作家で、なるほどと、納得がいった。
■家康の人生観「人生は重石を背負って遠き道をゆくがごとし」を地で行く作家だ。彼の文学手法は、彼独特の言い回し、起承転結のない構成、場面々々の連続描写で流れを作るストーリー展開である。奇も衒いもないあけっぴろげな文章も魅力。
■この作家の生きざまは、以前、読書会で取り上げた長山則夫を彷彿とさせる。ともに不幸な生い立ちを背負い、子どもに不可欠なビタミン剤・母親の愛が欠如していた。長山則夫は母の愛があれば死刑囚にはならなかったろうし、西村賢太も、もっと高学歴に進んで広いジャンルの小説が書けただろう。才能があるだけに惜しまれる。
■中学出でこれだけの文章、小説が書けるのかと、驚きである。不幸な生い立ちは性犯罪者の父親、ふしだらな母親にある。計画性ゼロの男だ。母親が愛情を注げば、こんな破天荒な人生は歩まなかっただろう。
■これまで読んだ小説の中ではいちばん読みづらかった。出鱈目ともいえる生きざまはまるで計画性がなく、この小説も何が言いたいのか、作者が何を目指しているのか、さっぱりわからぬ。
たかが石、されど石。城の石垣を築く石工と、鉄砲鍛冶の息詰まる攻防を描き、第166回直木賞を取った作品。550頁の大分な物語は読み応え十分。
■お城に興味があり、とても面白く読んだ。特に京極高次という戦国大名のしたたかさに舌を巻く。まさに怪物。女の尻の光で数奇な運命を乗り切り、「蛍大名」と蔑視されるが、実は人心掌握の名手。石工集団・飛田屋と鉄砲鍛冶集団・国友衆との攻防が活写され、読み応えのある力作。
■時は関ヶ原前夜、場所は琵琶湖の畔・大津城。東軍の捨て城として京極高次が西軍を迎え撃つ。圧巻はラストの石工集団・飛田屋と鉄砲鍛冶集団・国友衆の息詰まる攻防戦。城壁の要石が割れ,大筒が過熱で火を噴く。楯と矛は引き分けに終わる。
■作品に興味を持ったのは、主人公が武士ではなく、城壁を築く石工である点。大津城主・京極高次と妻のお初(母は信長の妹・お市の方)の、家臣や領民を思いやる、ほのぼのとした情感が伝わってきて、殺伐とした関ヶ原の戦い前夜の血なまぐささを和らげている。無駄な石など一つもない。大小の石が幾何学的、有機的に重なり合って強靭な石垣を作る。人間も同じ。これが人の和に通じる。
■550頁の長編、何とか読み切った。石工集団・飛田屋の門外不出の築城技術は、石の切り出し、運搬、積み上げの三つの工程に独特の工夫を凝らした、プロ集団の技術である。読み応えのある力作といえる。
■一片の石をテーマに、よくもここまで描いたと感服。石を積み上げるのにもいろいろな手法があり、勉強になった。まだ半分までだが、後半しっかりと読む。
■半分まで読んだが、城壁の石がテーマで、興味を持った。日本固有の石垣技術、作者は面白い点に目を付けた。
20年ほど前に500万部を売ったベストセラー作品。作者は『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を取った井沢元彦。歴史の解説書として本日の読書会参加者には敬遠されたようだが、実は解説書ではなく、日本歴史の舞台を小説感覚で面白く捕えた、テンポの速い力作である。全22巻、大和朝廷から現代までの歴史の大きなうねりが大筋で理解できる。これだけ面白く読ませる作者の語り口、筆力を買う。
■あまり気が進まぬまま手に取り、読み始めた途端に引きずり込まれ100ページを読んで「なんだこれは!」と一気に読み終え、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の舞台裏を知りたいと5巻『源氏勝利の奇跡の謎』を買いに走って、これも面白く読み終えた。司馬遼太郎『街道をゆく』全43巻に匹敵するシリーズもので、今年は『逆説の日本史』全22巻を買いそろえて第1巻から読むことにした。一読をお勧めする。
■日本で幕府を開いたのは頼朝・尊氏・家康の3人だけ。三者を比較すると、尊氏の人の好さがよく分かる。頼朝・家康にあって尊氏にないものは非情さであり、この温情主義が後に南北朝という大戦乱の時代に突入する原因を作った。三代将軍・義満の最大の功績は、金閣寺もさることながら、この南北朝を一つにまとめたことだろう。
■室町幕府三代将軍・足利義満の意外な面を知った。聖徳太子の17条憲法「和をもって尊しとす」の哲学が連綿と歴所の根底に流れ、それが現代の日本社会に生きているという事実を教えられた。
■こんな天皇だったのかと、後醍醐天皇の欠徳ぶりを痛罵しているのが面白い。ここではやはり三代将軍・義満が光っている。また、くじ引きで将軍になった五代将軍・義教の「恐怖の魔王」ぶりがすさまじい。
■歴史ものは登場人物が入り乱れて複雑怪奇、人間関係の把握が難しいのが難点。この作品も入り口でお手上げ。
■歴史はあまり好きではない。課題本を買って読み始めたが登場人物が多くて途中で投げた。司会者の推薦もあるのでこれから読み直す。
1月はコロナ禍で中止となり、二カ月遅れの読書会となった。
■若冲は謎の多い絵師で、それだけ自由に想像を膨らませることが出来、小説になりやすい人物である。ここでは澤田瞳子が存分に筆を振るい、力作が生まれた。稼業も女房も捨て、絵に没頭した執念、情熱には鬼気迫るものがある。
■若冲は、錦市場の商家のボンボンとして育ったが、絵師としての才能は作者の想像通り、天才的資質を持っていたと思う。人物の中では特にお志乃が光っている。
■課題本を読む以前から、若冲には興味があった。狩野派と徹底的に戦い、最後に敗れたが、絵は狩野派の上を行くと思う。若冲の絵に対する情熱が迸る小説だ。
■面白く、一気に読んだ。これだけ絵に情熱を傾けられるのは、若冲が天才絵師だからだと思う。ラストが圧巻。
■だらだらと起伏のないストーリーが続き、途中で投げ出したくなったが、ラストの「日隠れ」の章でパッと光りを放ち、若冲と義弟・弁蔵との確執の真相が明らかにされる。ただ、弁蔵が一生をかけて若冲に復讐する動悸が少し弱いように思う。
■京都に若冲の展覧会を見に行き、思いをはせた。異常にすごい、としか言いようのない絵に対する情熱に脱帽。
■京都の博物館で水墨画のゾウの絵を見たが、この作品のカバーにある彼の代表作、鶏の絹本彩色画には、思わず息を呑んだ。特に、らんらんと光る目が一点を見つめる構図は戦慄が走る。
■実在の人物を作者の想像で存分に膨らませhttps://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=new#た力作。若冲の本心は最終章「日隠れ」の章に言い尽くされている。過日、若冲を偲び京都・伏見の街を散策して歩いた。
■まだ半分だけだが、読みやすい文章で面白く読んでいる。
隔月で開催している読書会だが、9月が新型コロナ禍で中止になり、今回は4ヵ月ぶり。課題本の第165回直木賞受賞作・佐藤 究『テスカトリポカ』は540ページ、1000枚を超す大作で、圧倒的な読者の賛同を得た。楽しみな作家である。次作も取り上げてみたい。
■まずそのスケールの大きさに圧倒された。メキシコのドラッグカルテル同士の殺戮、日本・インドネシアでの臓器売買、人間の内臓を神に捧げるメキシコの土着の宗教を背景に、映画の早撮りで、カット・カットと場面が変わるテンポの良さが魅力。久しぶりに読書の醍醐味を味わった。小説、かくあるべし。
■これ程広大無辺なエンタメ小説はかつて読んだことがない。作者の筆力に脱帽する。アステカ帝国の守護神テスカトリポカは皆既日食だったと分かって、その神秘性を失い、麻薬組織が崩壊する件に救いがある。
■インカ帝国の宗教観に興味があり、キリスト教とローカル原始宗教との対比で読んだ。小説に登場する中南米の人間と比べ、日本人はスケールが小さい。ラストでコシモが生き残ったのは、彼を主人公にした続編が出るのだと期待する。力作に巡り逢えた。
■NHKテレビ・BSプレミアム『決戦! タイムリミット』で、今年の芥川賞、直木賞の選考過程が取り上げられ、課題本も議論されていた。この小説は、テーマの可否と残虐な場面が多く、選考はもめたが、ラストに救いがある、との大方の意見でやっと受賞を見た。3分の1を読んだところで目を覆い、中断した。気を取り直して読み直し、ラストの493ページ、パブロがコシモをカヌーに乗せ、多摩川を下るシーンが泣けて、泣けてどうしようもなかった。ドンと胸に来る重い作品だった。
■外国文学の翻訳版かと思ったが、オリジナル日本文学で、その圧倒的筆力に引きずられ、一気に読んだ。前の発言者と同じく、ラストで泣けた。
■久々の大作を読んだ。グロテスクな程残虐だが、ラストで救われる。
■全部読んだ。話はめちゃくちゃ面白かったが、なんでこんな小説書くのか、作者の意図が良く分からない。